校旗の修理~120年の時を超え~【長崎県】
「長崎県立中学猶興館」様より校旗の修理のご依頼をいただきました。
かなり歴史の歴史を感じる“校旗”でありましたので、その歴史背景を調べさせていただきました。
1880年(明治13年)に、旧平戸藩主第37代松浦詮の創設した私塾「猶興書院」からはじまり、現在の「長崎県立猶興館高等学校」に校名が変わっています。
140年以上の長い歴史がある学校の校旗であり、創設以来、はじめての修理をおこなうということでした。
修理前
全体的に傷んでいますが、丁寧に扱われてきたのが一目でわかる旗でした。
竿側の生地が折れて擦れて破れており、生地全体が日焼けで退色し、刺繍部分はほどけ・ほつれ、フレンジも全体的に外れています。
最も大きな問題は刺繍と生地(竿側の破れている部分)でした。生地の退色はどうにもできません。フレンジはつけ直せばいいので大きな問題ではありませんでした。
修理方法としましては、
① フレンジを外し、袷わせ旗を開く
② 薄い絹生地を裏打ちをする
③ 刺繍を修繕する
④ ネル芯を入れる。全体的に強度を持たせる補強修理をする
⑤ モール、フレンジを取り付ける
という工程でおこなわせていただきました。
修理工程 ①
まずフレンジとモールを外し、解体します。モールがついていた部分が元の生地の色です。こう比較できますと、どれだけ退色しているのかが分かりますね。
修理工程 ②
裏面一面に薄い正絹の生地を貼り付けます。その上から刺繍の修理を終えました↓
修理工程 ③
刺繍が綺麗になりました。
修理工程 ④
芯にネル生地を入れ、ミシンで仕立てていきます。
修理工程⑤
周囲にフレンジを取り付けます。
<刺繍(組み縫い)について>
刺繍の職人さん(伝統工芸士)によりますと、
この校旗には、“組み縫い”という刺繍が施されており、
これは当時の最高峰の技術であり、何段も何段も金糸を重ねて作り上げていく技法であるということです。
現在できる方は、ほとんどいないということでしたので、かなり希少価値の高いものであることがわかりました。
そして、
今回、修理のご提案と合わせて、収納方法についてもご提案させていただきました。
これだけ歴史のある校旗ですので額装をお勧めしたのですが、「修理してまだ使います」とのことでしたので、刺繍が折れないトランクをご提案いたしました。
今回に限らず、刺繍部分が崩れる原因の一つとして、収納するケースが小さいということが考えられます。
収納するケースが小さい。=刺繍の中央で折り曲げられた部分に負荷がかかる。=その部分の刺繍が崩れてくる。
ということが想定されるのです。
したがいまして、刺繍部分を折らずに保管ができるサイズのトランクを新調されることを、強くご提案させていただきました。
効率良く、永くお使いいただくために、このような附属品の新調を合わせておすすめすることも不可欠であると考えております。
このように古い校旗をお持ちの場合は、新調されることの方が一般的かもしれませんが、
こうした希少性の高い、歴史の重みのある校旗につきましては、修理をおこない、引き継いでいかれることも非常に重要だと思います。
事実、依頼主の方からも、「粗末には扱えない。」という想いから、新調ではなく、修理という形で依頼を受けさせていただくことになりました。
さらに、
依頼主の方から、話をうかがいますと、
創設以来、大きく分けますと、「長崎県立中学猶興館」、「長崎県立平戸高等女学校」、「長崎県立猶興館高等学校」と変遷があり、
それぞれに校旗がつくられています。
今回、そのうちの1本であります、「長崎県立中学猶興館」の修理をおこなわさせていただきました。
この校旗を含む3本の校旗は、入学式、卒業式といった特別な行事の際に勢ぞろいして、
学校を創設した旧平戸藩主の松浦家のご党首の方も参列されるという、歴史のつながりと伝統を感じる行事がおこなわれているということです。
なお、
「長崎県立中学猶興館」は、1947年の学校教育法前の旧制中学校であり、施行後は高等学校(新制)に移行しています。
男子に対して中等教育(普通教育)をおこなっていたのが旧制中学校であり、女子に対しておこなっていたのが高等女学校という歴史背景がありますので、
「中学校」、「高等女学校」、「高等学校」と変遷と統合がおこなわれてきたことが、学校の年表からも校旗からも、うかがい知ることができます。
また、
学校を創設した旧平戸藩主の松浦家と弊社の社長とは、遠い親類であることが、校旗を納めさせていただいたのちに判明いたしました。
世の中は狭いものであると実感すると同時に、たいへんご縁のあるご依頼であったと強く感じました。
校旗は、生徒の皆様はもちろん、学校関係者、保護者の方、地域の方にとって、「喜びの旗」であります。
今回の校旗修理におきまして、弊社で手が加えられたことで、さらなる「喜びの旗」となってほしいという想いを込めて、
これからもさらに引き継がれていかれるように、丁寧に、修理をさせていただきました。
旗の修理を含めて、旗のことなら京都・平岡旗製造株式会社にお任せください。
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